2010年4月29日木曜日

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマ:経営判断の原則

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日のテーマは、経営判断の原則についてです。

取締役が善管注意義務や忠実義務に違反したときは、会社に対して損害賠償責任を負います。ただ、経営判断の原則との関係で、どのような場合に取締役が責任を負うのかは、しばしば問題になります。ここに、経営判断の原則とは、取締役の経営判断が会社に損害を与える結果を生じたとしても、当該判断が一定の要件のもとに行われた場合には、裁判所が判断の当否について事後的に介入し、注意義務違反として取締役の責任を直ちに問うべきではないという考えのことです。その具体的な要件について、裁判例においては、以下のように判断されています。

以下は、判決文の引用です。

企業の経営に関する判断は不確実かつ流動的で複雑多様な諸要素を対象にした専門的、予測的、政策的な判断能力を必要とする総合的判断であり、また、企業活動は、利益獲得をその目標としているところから、一定のリスクが伴うものである。このような企業活動の中で取締役が萎縮することなく経営に専念するためには、その権限の範囲で裁量権が認められるべきである。したがって、取締役の業務についての善管注意義務違反又は忠実義務違反の有無の判断に当たっては、取締役によって当該行為がなされた当時における会社の状況及び会社を取り巻く社会、経済、文化等の情勢の下において、当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験を基準として、前提としての事実の認識に不注意な誤りがなかったか否か及びその事実に基づく行為の選択決定に不合理がなかったか否かという観点から、当該行為をすることが著しく不合理と評価されるか否かによるべきである。・・・本件第2貸付けを中止することは、本件計画を断念することに匹敵する事態であり、そのような判断を当時行うだけの事情はなかったと言うべきである。また、貸付けに当たっての債権保全措置に前記のとおり遺漏があったことは認められるが、経営者としては弁護士を含む事務担当者が適切に処理することを期待することは相当であり、原告ら役員に義務違反があったとは言えない。・・・平成5年中のH弁護士、N弁護士等の調査結果から、直ちに本件計画を断念して、貸金債権回収の法的手段を講ずるべきであるとの結論は導くことはできない。

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。個人の方で、以上の点のほか、未払いの残業代問題など法律問題につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。