2009年11月2日月曜日

顧問弁護士(法律顧問)に多い質問・・・競業避止義務

顧問弁護士(法律顧問)としてよく受ける問いについてまとめていきます。今回は、競業避止義務についてです。

この点について、フィセコ・ジャパン・リミティッド事件において、奈良地裁は、以下のように判断しています。

一般に雇用関係において、その就職に際して、或いは在職中において、本件特約のような退職後における競業避止義務をも含むような特約が結ばれることはしばしば行われることであるが、被用者に対し、退職後特定の職業につくことを禁ずるいわゆる競業禁止の特約は経済的弱者である被用者から生計の道を奪い、その生存をおびやかす虞れがあると同時に被用者の職業選択の自由を制限し、又競争の制限による不当な独占の発生する虞れ等を伴うからその特約締結につき合理的な事情の存在することの立証がないときは一応営業の自由に対する干渉とみなされ、特にその特約が単に競争者の排除、抑制を目的とする場合には、公序良俗に反し無効であることは明らかである。従って被用者は、雇用中、様々の経験により、多くの知識・技能を修得することがあるが、これらが当時の同一業種の営業において普遍的なものである場合、即ち、被用者が他の使用者のもとにあっても同様に修得できるであろう一般的知識・技能を獲得したに止まる場合には、それらは被用者の一種の主観的財産を構成するのであってそのような知識・技能は被用者は雇用終了後大いにこれを活用して差しつかえなく、これを禁ずることは単純な競争の制限に他ならず被用者の職業選択の自由を不当に制限するものであって公序良俗に反するというべきである。
 しかしながら、当該使用者のみが有する特殊な知識は使用者にとり一種の客観的財産であり、他人に譲渡しうる価値を有する点において右に述べた一般的知識・技能と全く性質を異にするものであり、これらはいわゆる営業上の秘密として営業の自由とならんで共に保護されるべき法益というべく、そのため一定の範囲において被用者の競業を禁ずる特約を結ぶことは十分合理性があるものと言うべきである。このような営業上の秘密としては、顧客等の人的関係、製品製造上の材料、製法等に関する技術的秘密等が考えられ、企業の性質により重点の置かれ方が異なるが、現代社会のように高度に工業化した社会においては、技術的秘密の財産的価値は極めて大きいものがあり従って保護の必要性も大きいと考えられる。即ち技術的進歩、改革は一つには特許権・実用新案権等の無体財産権として保護されるが、これらの権利の周辺には特許権等の権利の内容にまではとり入れられない様々の技術的秘密ーノウハウなどーが存在し、現実には両者相俟って活用されているというのが実情である。従ってこのような技術的秘密の開発・改良にも企業は大きな努力を払っているものであって、右のような技術的秘密は当該企業の重要な財産を構成するのである。従って右のような技術的秘密を保護するために当該使用者の営業の秘密を知り得る立場にある者、たとえば技術の中枢部にタッチする職員に秘密保持義務を負わせ、又右秘密保持義務を実質的に担保するために退職後における一定期間、競業避止義務を負わせることは適法・有効と解するのを相当とする。

労働契約終了後の競業避止特約の有効要件については、①使用者の正当な利益、②労働者の在職中の地位や職務内容、③競業禁止の期間や地域の範囲、④労働者のキャリア形成の経緯、⑤労働者の背信性、⑥代償措置などを総合的に考慮して有効性を判断する枠組みが裁判例において定着しています。



これらについて、ご不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にお問い合わせください。労働者の方で、残業代の不払いなど法律問題でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2009年10月25日日曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:事後設立

顧問弁護士(法律顧問)が日々接するテーマをまとめています。

今回は、会社設立前から存在する財産を会社設立後に取得することについてです。

旧商法においては、事後設立、すなわち会社成立後2年以内に資本の20分の1以上に当たる対価をもって会社成立前から存在する営業用財産を取得することについては、株主総会の特別決議に加えて検査役の調査が必要とされていました。しかしながら、調査役の検査は多額の費用を要し、また相当の時間を要するなど負担が大きいため、実務では事後設立はほとんど利用されませんでした。その代わりに設立後2年以上経過した休眠会社を買い取って受け皿会社として利用したり、リースや賃貸借を利用したりする対策がとられてきました。また、事後設立規制があるとしても、債権者や株主の保護という目的を達することができないということも指摘されていました。

こうした理由により、事後設立における検査役の調査は、会社法のもとでは廃止されることになりました。ただし、事後設立に関する株主総会の決議は引き続き必要です。決議の基準は、事業全部の譲受けにつき株主総会の決議を要する基準と同じく、特別決議です。同族会社など、特別決議を経ることが容易な会社にとっては、会社設立前から存在する財産を会社設立後に取得することは非常に楽になったといえます。

株主総会の決議が不要になる要件については、取得する財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額の当該株式会社の純資産額に対する割合が、5%基準から20%基準まで引き上げました。よって、特別決議すら不要になるケースも会社法上は増えたといえます。

なお、新設合併、新設分割または株式移転により設立された会社については事後設立規制が課せられないことが明確にされています。



ご不明な点は、顧問弁護士にご相談ください。また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代の請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

2009年6月23日火曜日

残業代請求(サービス残業)

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 


(4)まとめ
ア 以上によると,原告の時間外の労働時間,休日の労働時間,これらのうち深夜の労働時間の合計は,別表3(別表2の各表の末行を集計したもの)記載のとおりである。
イ 平成17年3月分から5月分まで
(1)で認定判示したとおり,平成17年3月分から5月分までの原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金の金額は,38万5200円である。
 また,(2)で認定判示したとおり,原告の1か月の平均所定労働時間数は170時間とするのが相当である(以下同じ。)。
 したがって,次の計算式により,この期間の時間外手当(残業代)は96万4699円(円未満切捨て。以下同じ。),深夜割増手当は2万9928円,以上の合計は99万4627円である。
計算式
385,200÷170×1.25×(340+36÷60)=964,699
385,200÷170×0.25×(52+50÷60)=29,928
ウ 平成17年6月分
(1)で認定判示したとおり,平成17年6月分の原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金の金額は,38万9200円である。
 したがって,次の計算式により,この期間の時間外手当(残業代)は53万9871円,休日手当は4万4763円,深夜割増手当は3万2290円,以上の合計は61万6924円である。
計算式
389,200÷170×1.25×(188+39÷60)=539,871
389,200÷170×1.35×(14+29÷60)=44,763
389,200÷170×0.25×(56+25÷60)=32,290
エ 平成17年7月分から平成18年6月分まで
(1)で認定判示したとおり,平成17年7月分から平成18年6月分までの原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金の金額は,39万2200円である。
 したがって,次の計算式により,この期間の時間外手当(残業代)は416万5923円,休日手当は30万2005円,深夜割増手当は19万4350円,以上の合計は466万2278円である。
計算式
392,200÷170×1.25×(1444+35÷60)=4,165,923
392,200÷170×1.35×(96+58÷60)=302,005
392,200÷170×0.25×(336+58÷60)=194,350
オ 平成18年7月分
(1)で認定判示したとおり,平成18年7月分の原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金の金額は,39万3200円である。
 したがって,次の計算式により,この期間の時間外手当(残業代)は16万0508円,休日手当は1万7798円,深夜割増手当は1万1015円,以上の合計は18万9321円である。
計算式
393,200÷170×1.25×(55+31÷60)=160,508
393,200÷170×1.35×(5+42÷60)=17,798
393,200÷170×0.25×(19+3÷60)=11,015
カ まとめ
 そして,イからオまでの合計は646万3150円である。
 また,これに対する平成18年7月26日から同年12月31日まで(159日間)商事法定利率年6分の割合による遅延損害金は16万8927円である。
計算式 6,463,150×0.06×159÷365=168,927
 さらに,原告の時間外労働(残業),休日労働,深夜労働の時間数は非常に大きく,前記認定判示のとおり,そのほとんどが現場でのプリント作業に費やされている。また,被告は,タイムカードを通じて原告のこのような労働状態を認識していたところ,被告が,このような状態を改善しようとしたり,原告の健康管理に意を払ったりしたことを認めるに足りる証拠はない。
 そして,これらの事情に照らすと,原告が請求する労働基準法114条所定の付加金は,上記認定金額の646万3150円の限度で理由があるというべきである。なお,原告が本件訴訟を提起したのは平成19年3月21日であり,もっとも古い平成17年3月分の割増賃金(残業代)(支払日は同月25日)についても,同条ただし書きの期間は遵守されている。
 また,原告は,付加金の支払についても仮執行宣言を求めるが,同条所定の付加金は,裁判所の判決が確定してはじめて発生するものであるから,その性質上,仮執行宣言を付することはできない。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年5月23日土曜日

残業代の請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

3 争点2(原告が請求しうる額)
(1)被告が原告に対して支払っていた賃金の額
ア 原告は,平成17年2月16日から平成18年6月22日までの原告の労働に対して被告が支払った賃金は別表1の各頁の2行目の「総支給額」欄記載のとおりである旨を主張し,それから3行目の「通勤手当」欄記載の金額を控除した1行目の「総支給額―通勤手当」欄記載の金額が,労働基準法37条1項所定の「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」を定める基準である旨を主張する。
 しかし,被告が原告に支払った金額は,乙第7号証記載の金額であることが認められ,これを超える金額が支払われたことを認めるに足りる証拠はない。
 また,2(4)ウで判示したとおり,原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金は,乙第7号証に基本給,職能手当,地域手当,役職手当として記入されている金額である。
イ 乙第7号証によると,原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金の金額は次のとおりであることが認められる(以下の記載において,例えば「平成17年3月分」というときは,平成17年2月16日から同年3月15日までをいう。)。
(ア)平成17年3月分から5月分まで
 基本給11万6800円,職能手当11万3400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計38万5200円。
(イ)平成17年6月分
 基本給11万8800円,職能手当11万5400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計38万9200円。
(ウ)平成17年7月分から平成18年6月分まで
 基本給11万8800円,職能手当11万8400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計39万2200円。
(エ)平成18年7月分
 基本給11万8800円,職能手当11万9400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計39万3200円。
(2)所定労働時間数
 労働基準法施行規則19条1項4号は,労働基準法37条1項の規定による通常の労働時間の賃金の計算額は,月によって定められた賃金については,その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には,1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額である旨を定める。
 そして,前記の労働基準法等で修正された後の原告と被告との労働契約の内容が,1週間につき40時間労働,1年につき51週間労働(就業規則12条が,年末年始と夏期に各5日間の休暇を認めていることを考慮した。)であることを考慮すると,1か月の平均所定労働時間数は,次の計算式による170時間とするのが相当である。
計算式 40×51÷12=170
 なお,これは,所定労働時間数を1か月につき172時間とする原告の主張よりも原告にとって有利である。
 しかし,これは法律の適用の問題であり,最終的に裁判所が認める金額が原告の主張する金額の範囲内である限り,弁論主義には違背しない。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年5月13日水曜日

残業代請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。


(3)原告の労働時間
 当裁判所は,原告は,別表2〈略〉の「年月日」欄記載の日に,「始業」欄記載の時刻から「終業」欄記載の時刻まで,被告の業務に従事した旨,したがって,各月の時間外の労働時間は別表2の各表の末行の「平日残業」欄記載のとおりであり,休日の労働時間は同行の「休日労働」欄記載のとおりである旨,これらのうち深夜の労働時間は同行の「深夜労働」欄記載のとおりである旨を認定する。
 なお,別表1と別表2との主な相違点は次のとおりである。
ア 原告本人の尋問の結果,検証の結果によると,原告は,平成17年2月16日から平成18年6月22日まで,別表1の「年月日」欄記載の日に,「始業時刻」欄記載の時刻,「終業時刻」欄記載の時刻にそれぞれタイムカードを打刻したことが認められる。なお,原告本人の尋問の結果によると,タイムカードの打刻がない日については,原告は,製品の発注のための取引業者との打ち合わせなどに従事していたことが認められ,これに反する証拠はないから,別表1記載の時刻をタイムカード打刻の時刻と同一視することができる。
 これに関し,被告は,タイムカードの打刻時刻は必ずしも原告の勤務実態を反映していない旨を主張する。
 このうち,原告が午後6時よりも前に退勤していることを指摘する点は,原告がこれについての時間外手当(残業代)を請求していないことが明らかであるから,考慮する必要がない。
 ただし,始業時に,タイムカードを打刻してから使用者の指揮命令下におかれたと評価されることにより労働時間が開始するとされるまで,若干の時間を要することは当裁判所に顕著であり,弁論の全趣旨により,タイムカードによる始業時刻から就業規則上の始業時刻である午前9時までの時間帯のうち最大で20分間を労働時間から除外することとする。なお,労働時間が終了してからタイムカードの打刻までの間にも同様の問題が生じるが,始業時に比べてこれに要する時間はきわめて少ないと考えられるので,これを考慮しないこととする。
イ 平成17年3月分
(ア)原告は,平成17年2月19日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月15日以前の労働につき主張のない本件においては,この週の労働は同月16日から19日までの4日間であり,この期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同月27日の就労を休日の労働として計上する。
 しかし,前記認定判示のとおり,被告の就業規則13条には休日の振替に関する規定があり,別表1によると,同日から1週間以内の同年3月5日には原告は就労していないから,同年2月27日の就労は平日の労働(すべて時間外労働(残業))として計上されるべきである。
ウ 平成17年4月分
(ア)原告は,平成17年3月19日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月17日には原告は就労しておらず,同月14日から20日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月19日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,平成17年3月26日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月21日には原告は就労しておらず,同日から同月26日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月26日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
エ 平成17年5月分
 原告は,平成17年5月7日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月3日から5日までは原告は就労しておらず,同月2日から7日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
オ 平成17年6月分
 原告は,平成17年6月4日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月1日には原告は5時間42分しか就労しておらず,同年5月30日から6月5日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月4日の就労は,2時間18分の限度では時間外労働(残業)とならない。
 なお,別表1の平成17年6月分の平日残業時間の合計には誤算がある(「######」と記載されている欄に何らかの負の値があることが原因であると考えられる。なお,他にも同様の例があるが,これ以降は指摘しない。)。
カ 平成17年8月分
 原告は,平成17年8月6日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月2日には原告は3時間30分しか就労しておらず(午前9時から休憩開始時刻の午後0時30分まで)、同月1日から6日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月6日の就労は,4時間30分の限度では時間外労働(残業)とならない。 
キ 平成17年9月分
(ア)原告は,平成17年8月20日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月16日には原告は1時間23分しか就労しておらず,同月15日から21日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月20日の就労は,6時間37分の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同月21日の休日労働時間を28分と主張する。
 しかし,タイムカードの打刻は午後1時26分と午後2時54分であり,就業規則上,休憩時間が終了する午後1時30分から午後2時54分までの1時間24分を休日労働時間とするのが相当である。
(ウ)原告は,同年9月3日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月1日には原告は就労しておらず,同年8月29日から9月4日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月3日の就労を平日の時間外労働(残業)とすることはできない。
ク 平成17年10月分
(ア)原告は,平成17年9月24日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月23日には原告は就労しておらず,同月19日から25日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月24日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同年10月15日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月10日には原告は4時間14分しか就労しておらず,同日から16日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月15日の就労は,3時間46分の限度では時間外労働(残業)とならない。
ケ 平成17年11月分
 原告は,平成17年11月5日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月3日には原告は就労しておらず,同年10月31日から11月6日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月5日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
コ 平成17年12月分
(ア)原告は,平成17年11月19日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月16日には原告は就労しておらず,同月14日から20日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月19日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同月26日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月23日には原告は就労しておらず,同月21日から27日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月26日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
サ 平成18年1月分
(ア)原告は,平成17年12月24日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月21日及び22日には原告は就労しておらず,同月19日から25日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月24日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,平成18年1月7日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月2日から4日まで原告は就労しておらず,同月2日から9日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月7日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
シ 平成18年3月分
 原告は,平成18年2月18日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月16日には原告は就労しておらず,同月13日から19日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月18日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
ス 平成18年4月分
 原告は,平成18年4月1日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同年3月30日には原告は6時間44分しか就労しておらず,同月27日から同年4月2日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月1日の就労は,1時間16分の限度では時間外労働(残業)とならない。
セ 平成18年5月分
 原告は,平成18年4月30日の就労を休日の労働として計上する。
 しかし,前記認定判示のとおり,被告の就業規則13条には休日の振替に関する規定があり,別表1によると,同日から1週間以内の同月29日には原告は就労していないから,同月30日の就労は平日の労働として計上されるべきである。
ソ 平成18年6月分
 原告は,平成18年5月28日の就労を休日の労働として計上する。
 しかし,前記認定判示のとおり,被告の就業規則13条には休日の振替に関する規定があり,別表1によると,同日から1週間以内の同月27日には原告は就労していないから,同月29日の就労は平日の労働として計上されるべきである。

企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇敷金返還・原状回復義務借金の返済刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年4月11日土曜日

未払いの残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。


(2)就業規則
 乙第2号証の1,検証の結果によると,被告の就業規則には,次のような定めがあることが認められる(なお,本件に関係のない条項については摘示しない。)。
(勤務時間)
第6条 勤務時間は,休憩時間を除き,1日8時間,1週48時間とする。
(始業,終業の時刻および休憩の時刻)
第7条 始業,終業の時刻および休憩の時刻は次のとおりとする。
1 通常勤務
始業 午前9時
終業 午後6時
休憩 午後0時30分より午後1時30分まで
(2号は省略)
(時間外労働(残業))
第11条 業務の都合により所定時間外に労働させることがある。
(2項以下は省略)
(休日)
第12条 休日は次のとおりとする。
1 1週に1日休日を与える。
2 年末年始の指定された日 5日間
3 夏期休暇に指定された日 5日間
(休日の振替)
第13条 業務の都合でやむを得ない場合は,前条の休日を1週間以内の他の日と振り替えることがある。
(2項は省略)
(休日労働)
第14条 業務上必要がある場合には,第12条の休日に労働を命ずることがある。
(2項以下は省略)
(非常災害時の特例)
第15条 事故の発生,火災,風水害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合には,第11条または第14条の規定にかかわらず,すべての従業員に対し,第6条の労働時間を超えて,または第12条の休日に労働させ,若しくは午後10時から午前5時までの深夜に労働させることができる。
(割増賃金(残業代))
第16条 第11条,第14条,または前条による時間外労働(残業),休日労働または深夜労働に対しては,賃金規程の定めるところによって割増賃金(残業代)を支払う。
(適用除外)
第17条 労働基準法第41条第2号または第3号に該当する管理監督者または監視断続労働従事者等については,本節(深夜労働に関する定めを除く。)の規定は適用しない。
(注 なお,ここでいう「本節」とは第6条から第17条までである。)
(賃金)
第41条 従業員の賃金は,別に定める賃金規程により支給する。
(3)賃金規程
 乙第3号証,検証の結果によると,被告の賃金規程には,次のような定めがあることが認められる(なお,本件に関係のない条項については摘示しない。)。
(賃金の構成)
第2条 賃金の構成は次のとおりとする。
賃金
基本給
諸手当 役付手当
    家族手当
    通勤手当
    職能手当
割増賃金(残業代) 時間外労働(残業)割増賃金(残業代)
     休日労働割増賃金(残業代)
     深夜労働割増賃金(残業代)
(時間外労働(残業)割増賃金(残業代),休日労働割増賃金(残業代),深夜労働割増賃金(残業代))
第9条 所定就業時間を超えてまたは休日に労働した場合には時間外労働(残業)割増賃金(残業代)または休日労働割増賃金(残業代)を,深夜(22時から5時までの間)において勤務した場合には深夜労働割増賃金(残業代)を,それぞれ次の計算により支給する。
(1号省略)
2 月給の場合
時間外労働(残業)割増賃金(残業代)
(基本給+役付手当+職能手当)÷1月平均所定労働時間×1.25×時間外労働(残業)時間数
休日労働割増賃金(残業代)
(基本給+役付手当+職能手当)÷1月平均所定労働時間×1.25×休日労働時間数
深夜労働割増賃金(残業代)
(基本給+役付手当+職能手当)÷1月平均所定労働時間×0.25×深夜労働時間数
〔2〕所定就業時間を超えて,または休日に労働した時間が深夜に及んだ場合は,それぞれ,時間外労働(残業)割増賃金(残業代)または休日割増賃金(残業代)と深夜労働割増賃金(残業代)を合計した割増賃金(残業代)を支給する。
(役付手当)
第10条 役付手当は職務上,責任の重い管理的地位にある者に対し次の額を支給する。
(注・続いて,職名,支給額の欄を設けた表が記載されているが,表中の記載はない。)
(4)労働基準法所定の基準に達しないもの
 上記就業規則・賃金規程の定めのうち,次の部分は労働基準法所定の基準に達しないため無効である。
ア 労働基準法32条1項は,使用者は,労働者に,休憩時間を除き1週間について40時間を超えて,労働させてはならない旨を定める。
 したがって,被告の就業規則6条の定めのうちこれに反する部分は無効であり,労働基準法所定の基準によることとなる。
イ 労働基準法37条,労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金(残業代)に係る率の最低限度を定める政令,労働基準法施行規則20条によると,時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)は,通常の労働時間における賃料に,時間外労働(残業)においては2割5分以上,休日労働においては3割5分以上,時間外労働(残業)と深夜労働が重なるときは5割以上,休日労働と深夜労働が重なるときは6割以上の割増賃金(残業代)を加えたものでなければならない。
 したがって,被告の就業規則16条,賃金規程9条のうちこれに反する部分(休日労働,休日労働と深夜労働が重なるとき)は無効であり,上記基準によることとなる。
ウ 労働基準法37条4項は,割増金額の基礎となる賃金には,家族手当,通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない旨を定め,これを受けて労働基準法施行規則21条は,家族手当及び通勤手当のほかに住宅手当も割増賃金(残業代)の基礎となる賃金には算入しない旨を定める。
 これに対し,上記認定判示のとおり,被告の賃金規程においては,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金は基本給,役付手当,職能手当の和である旨を規定する。
 そして,乙第7号証によると,原告が受け取っていた賃金の中には「地域手当」が含まれていることが認められ,これは労働基準法,同法施行規則により,割増賃金(残業代)の基礎となる賃金から除外することが認められていないから,上記賃金規程に「地域手当」が含まれていない点は無効であり,これも割増賃金(残業代)の基礎となる賃金に含まれる。
エ なお,被告の就業規則17条は,管理監督者であっても深夜労働の割増賃金(残業代)に関する適用除外を行わない旨を定める。そして,これは,労働基準法の定めとは異なるが,同法の定めと比較して労働者に有利な変更であるから,同法13条の適用はなく,有効である。
 したがって,争点1(管理監督者)に関する被告の主張を前提とした場合であっても,被告は,原告に対し,深夜労働の割増賃金(残業代)を支払うべき義務を負う。

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2009年3月3日火曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

第3 争点に対する判断
1 争点1(管理監督者)
 原告が労働基準法41条2号において時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)に関する規定の適用を除外されている管理監督者であることは,被告が立証責任を負う抗弁であるところ,次に述べるとおり,これを認めるに足りる証拠はない。
(1)争いのない事実(2)記載のとおり,原告が,被告において,生産統轄本部の技術課課長であったことは当事者間に争いがない。
 また,乙第6号証,第12号証,原告本人及び被告代表者の各尋問の結果によると,技術課には,課長である原告のほかに,平社員が3名,パートが5名程度所属していたこと,技術課の具体的な仕事の内容は,顧客の依頼によりデザイン課が作成したデザインをもとに,版下となるシルクスクリーンを作成し,これに調合したインクをのせて,無地のTシャツ・ジャンパーなどにこのデザインをプリントするというものであること,原告もこれらの作業を直接担当していたこと,技術課の中で課長である原告のみが担当していたのは,業務課から技術課に発注されてきた量が多く,技術課の社員・パートのみでは納期までに納入することができない場合に,その一部を外部の提携業者に発注すること,発注する先の業者を選定すること,部下の第一次的な人事考課を行うこと程度であったことが認められる。
 そして,これらによると,原告は現場のいわば職長という立場にすぎず,その具体的な職務内容,権限及び責任などに照らし,原告が管理監督者であるとすることはできない。
 なお,原告本人の尋問の結果によると,原告の時間外労働(残業),休日労働のほとんどは,業務課から技術課に対して技術課で時間内に処理しうる限度を超えた量の発注がされたことが原因で,原告が自らプリント作業を行うために費やされたことが認められ,原告の時間外労働(残業),休日労働が,被告のいう管理・監督に関する作業に費やされたことを認めるに足りる証拠はまったくない。
(2)原告が,1か月に2回程度実施される経営会議に出席していたことは当事者間に争いがない。
 そして,乙第1号証,原告本人及び被告代表者の各尋問の結果によると,この経営会議は,月々の営業目標の設定,売上げノルマの到達度の確認などを行う会議であることが認められ,この会議において,原告が,被告の経営についての重要事項に関して何らかの積極的な役割を果たしたことを認めるに足りる証拠はない。
 なお,原告の具体的な職務内容などについては,(1)で認定判示したとおりである。
(3)被告は,原告に支給されていた給与が社内でも屈指のものであった旨を主張する。
 しかし,その比較の対象を,被告と労働契約を締結しているわけではない代表取締役・取締役に求めるのは相当ではなく(ちなみに,被告が主張するこれらの者に関して,どの程度の時間を職務にあてているかを認めるに足りる証拠もない。),原告が課長に昇進した前後の比較や,他の平社員との比較をしなければ,原告が管理監督者として処遇されているというに足りる給与を得ているかどうかは明らかとはならない。そして,この点に関する証拠はまったく存在しない。
(4)被告は,原告の出社・退社の時刻は原告の自由に委ねられていた旨を主張する。
 しかし,これを認めるに足りる証拠はまったくなく,むしろ,乙第2号証の1,原告の本人尋問の結果,検証の結果によると,被告の就業規則においては始業が午前9時,終業が午後6時と定められていること,原告はこの時間帯には会社にいるか,製品の発注のための取引業者との打合せなどの被告の業務に従事していたことが認められる。
2 原告と被告との労働契約の内容
(1)争点2(原告が請求しうる額)に対する判断に先立ち,その前提となる原告と被告との間の労働契約の内容について検討する。
 もっとも,本件においては,原告と被告との間で「労働契約書」という文書が取り交わされたことを認めるに足りる証拠はない。また,乙第2号証の1ないし3,第3号証,検証の結果,弁論の全趣旨によると,被告においては,適法に制定された就業規則が存在すること,被告の賃金規程はこの就業規則で引用されており,その一部となっていることが認められる。
 したがって,労働基準法93条により,原告と被告との間の労働契約は,就業規則・賃金規程で定める基準によるということができる。ただし,同法13条により,これらが労働基準法で定める基準に達しない場合には,その部分については無効となり,この場合には,無効となった部分は同法が定める基準によることとなる。
 そこで,就業規則,賃金規程の順に,必要な限度でその内容を検討し,ついで,これらが労働基準法の定める基準に達するか否かを検討する。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年2月23日月曜日

サービス残業(残業代請求)

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

5 争点2(原告が請求しうる額)に関する当事者の主張
(1)原告の主張
ア 原告は,平成17年2月16日から平成18年6月22日まで,別表1〈略〉の月別残業代計算表(以下「別表1」という。)の「年月日」欄記載の日に,「始業時刻」欄記載の時刻から「終業時刻」欄記載の時刻まで,被告の業務に従事した。
 そして,各月の時間外の労働時間は別表1の各頁の1行目の「平日残業時間」欄記載のとおりであり,休日の労働時間は同行の「休日労働時間」欄記載のとおりである。また,これらのうち深夜の労働時間を兼ねる時間は同行の「深夜労働時間」欄記載のとおりである。
イ 別表1においては,割増賃金(残業代)を計算するにあたっての1時間あたりの基準賃金は,賃金の支払実績に照らし,平成17年3月度から平成18年1月度までは2309円,同年2月度から7月度までは2355円で計算している。なお,住宅手当は一律支給のため控除していない。
ウ そして,別表1記載のとおり,平成17年2月16日から平成18年6月22日までの時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)の合計は701万5441円である。
 また,これに対する同年7月26日から同年12月31日まで(159日間)の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の額は18万3362円であり,原告は,これとともに,上記701万5441円に対する平成19年1月1日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
 さらに,原告は,被告に対し,労働基準法114条所定の付加金701万5441円の支払も求める。
(2)被告の主張
ア 原告が主張する勤務時間は,タイムカードに依拠するものであるが,必ずしも原告の勤務実態を反映していない。
 特に別表1に頻繁に現れる「終業時刻」欄の「18:00」の記載は,いずれもタイムカードの打刻がなされていない部分であると思われるが,この部分については,原告は,現実にはその時刻以前に退勤しているのがほとんどである。
 また,午後10時以降にタイムカードの打刻がされていたとしても,この時間が単純に深夜割増賃金(残業代)の対象となると解すべきではない。
イ 原告の課長昇進時の経緯,原告が部下からも勤務態度の不真面目さに対して批判が集中していたことなどの諸般の事情に照らすと,仮に,被告に何らかの賃金支払義務があったとしても,労働基準法所定の付加金の支払義務を認めるのは相当ではない。
6 口頭弁論の終結の日
 本件の口頭弁論の終結の日は平成20年2月18日である。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返還請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年1月13日火曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第2 事案の概要
1 本件は,被告の従業員であった原告が,被告に対し,時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)の支払を求める事案である。
 なお,原告の請求の内訳は次のとおりである((1)から(3)までが請求1に対応し,(4)が請求2に対応する。)。
(1)平成17年2月16日から平成18年6月22日までの労働基準法37条所定の時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)701万5441円。
(2)(1)に対する平成18年7月26日から同年12月31日まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金18万3362円。
(3)(1)に対する平成19年1月1日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金。
(4)労働基準法114条所定の付加金として(1)と同額の701万5441円。
2 争いのない事実
(1)被告は,衣料品及びスポーツ用品のデザイン,製造,加工,販売等を業とする会社である。
(2)原告は,平成4年に被告に入社し,その本社においてユニフォームのプリント加工等の業務に従事していた。また,原告は,平成12年9月1日から,生産統括本部の技術課課長に就任した(ただし,この就任の日は被告が主張する日であり,原告は「平成13年ころ」と主張する。)。
 そして,原告は,平成18年6月26日から休業し,同年12月31日付けで被告を退職した。
(3)被告においては,賃金は,毎月15日締めで25日に支給されていた。
3 争点
 本件の主な争点は次のとおりである。
(1)原告が,労働基準法41条2号にいう「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)に該当するか否か。
(2)原告が被告に対して請求しうる時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)の金額。
4 争点1(管理監督者)に関する当事者の主張
(1)被告の主張
 原告は,労働基準法41条2号において時間外,休日及び深夜の割増賃金(残業代)に関する規定の適用を除外されている管理監督者である。
ア 原告は,平成12年9月1日に課長に昇進した。
 そして,被告においては,役職者は部長が1名,課長が2名(原告を含む。)しか存在せず,課長であっても,一般の企業に比して高い地位と大きな職責を有する。
イ 原告は,課長として,被告の経営方針等を協議・決定するために1か月に2回程度実施される経営会議に出席し,会社の経営の中枢を担っていた。また,報酬面においても,原告に支給されていた金額は代表取締役や取締役と比較しても遜色がなく,社内でも屈指のものであった。
ウ 原告の出社・退社の時刻は原告の自由に委ねられており、それが原告の勤怠成績として評価されたり,ボーナスの査定要素とされることはなかった。
(2)原告の主張
 原告が管理監督者であることは否認する。 
ア 原告は確かに課長ではあるが,その仕事の内容はユニフォームのプリント加工等という工場内での手作業を自ら行うことであって,その地位が高いわけではなく,その職責も限られたものであった。
イ 原告が,1か月に2回程度実施される経営会議に出席していたことは認める。
 しかし,この経営会議は,月々の営業目標の設定,売上げノルマの到達度の確認などを行う会議であり,ここで原告が関与して,被告の経営についての重要事項が決定されていたわけではない。
ウ 原告は,タイムカードにより始業時刻・終業時刻を管理されており,自由に出社・退社することができたわけではない。

企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇敷金返還・原状回復義務借金の返済刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。