2009年5月23日土曜日

残業代の請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

3 争点2(原告が請求しうる額)
(1)被告が原告に対して支払っていた賃金の額
ア 原告は,平成17年2月16日から平成18年6月22日までの原告の労働に対して被告が支払った賃金は別表1の各頁の2行目の「総支給額」欄記載のとおりである旨を主張し,それから3行目の「通勤手当」欄記載の金額を控除した1行目の「総支給額―通勤手当」欄記載の金額が,労働基準法37条1項所定の「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」を定める基準である旨を主張する。
 しかし,被告が原告に支払った金額は,乙第7号証記載の金額であることが認められ,これを超える金額が支払われたことを認めるに足りる証拠はない。
 また,2(4)ウで判示したとおり,原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金は,乙第7号証に基本給,職能手当,地域手当,役職手当として記入されている金額である。
イ 乙第7号証によると,原告の割増賃金(残業代)を算定する基礎となる賃金の金額は次のとおりであることが認められる(以下の記載において,例えば「平成17年3月分」というときは,平成17年2月16日から同年3月15日までをいう。)。
(ア)平成17年3月分から5月分まで
 基本給11万6800円,職能手当11万3400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計38万5200円。
(イ)平成17年6月分
 基本給11万8800円,職能手当11万5400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計38万9200円。
(ウ)平成17年7月分から平成18年6月分まで
 基本給11万8800円,職能手当11万8400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計39万2200円。
(エ)平成18年7月分
 基本給11万8800円,職能手当11万9400円,地域手当3万5000円,役職手当12万円,以上合計39万3200円。
(2)所定労働時間数
 労働基準法施行規則19条1項4号は,労働基準法37条1項の規定による通常の労働時間の賃金の計算額は,月によって定められた賃金については,その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には,1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額である旨を定める。
 そして,前記の労働基準法等で修正された後の原告と被告との労働契約の内容が,1週間につき40時間労働,1年につき51週間労働(就業規則12条が,年末年始と夏期に各5日間の休暇を認めていることを考慮した。)であることを考慮すると,1か月の平均所定労働時間数は,次の計算式による170時間とするのが相当である。
計算式 40×51÷12=170
 なお,これは,所定労働時間数を1か月につき172時間とする原告の主張よりも原告にとって有利である。
 しかし,これは法律の適用の問題であり,最終的に裁判所が認める金額が原告の主張する金額の範囲内である限り,弁論主義には違背しない。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年5月13日水曜日

残業代請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。


(3)原告の労働時間
 当裁判所は,原告は,別表2〈略〉の「年月日」欄記載の日に,「始業」欄記載の時刻から「終業」欄記載の時刻まで,被告の業務に従事した旨,したがって,各月の時間外の労働時間は別表2の各表の末行の「平日残業」欄記載のとおりであり,休日の労働時間は同行の「休日労働」欄記載のとおりである旨,これらのうち深夜の労働時間は同行の「深夜労働」欄記載のとおりである旨を認定する。
 なお,別表1と別表2との主な相違点は次のとおりである。
ア 原告本人の尋問の結果,検証の結果によると,原告は,平成17年2月16日から平成18年6月22日まで,別表1の「年月日」欄記載の日に,「始業時刻」欄記載の時刻,「終業時刻」欄記載の時刻にそれぞれタイムカードを打刻したことが認められる。なお,原告本人の尋問の結果によると,タイムカードの打刻がない日については,原告は,製品の発注のための取引業者との打ち合わせなどに従事していたことが認められ,これに反する証拠はないから,別表1記載の時刻をタイムカード打刻の時刻と同一視することができる。
 これに関し,被告は,タイムカードの打刻時刻は必ずしも原告の勤務実態を反映していない旨を主張する。
 このうち,原告が午後6時よりも前に退勤していることを指摘する点は,原告がこれについての時間外手当(残業代)を請求していないことが明らかであるから,考慮する必要がない。
 ただし,始業時に,タイムカードを打刻してから使用者の指揮命令下におかれたと評価されることにより労働時間が開始するとされるまで,若干の時間を要することは当裁判所に顕著であり,弁論の全趣旨により,タイムカードによる始業時刻から就業規則上の始業時刻である午前9時までの時間帯のうち最大で20分間を労働時間から除外することとする。なお,労働時間が終了してからタイムカードの打刻までの間にも同様の問題が生じるが,始業時に比べてこれに要する時間はきわめて少ないと考えられるので,これを考慮しないこととする。
イ 平成17年3月分
(ア)原告は,平成17年2月19日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月15日以前の労働につき主張のない本件においては,この週の労働は同月16日から19日までの4日間であり,この期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同月27日の就労を休日の労働として計上する。
 しかし,前記認定判示のとおり,被告の就業規則13条には休日の振替に関する規定があり,別表1によると,同日から1週間以内の同年3月5日には原告は就労していないから,同年2月27日の就労は平日の労働(すべて時間外労働(残業))として計上されるべきである。
ウ 平成17年4月分
(ア)原告は,平成17年3月19日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月17日には原告は就労しておらず,同月14日から20日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月19日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,平成17年3月26日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月21日には原告は就労しておらず,同日から同月26日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月26日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
エ 平成17年5月分
 原告は,平成17年5月7日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月3日から5日までは原告は就労しておらず,同月2日から7日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
オ 平成17年6月分
 原告は,平成17年6月4日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月1日には原告は5時間42分しか就労しておらず,同年5月30日から6月5日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月4日の就労は,2時間18分の限度では時間外労働(残業)とならない。
 なお,別表1の平成17年6月分の平日残業時間の合計には誤算がある(「######」と記載されている欄に何らかの負の値があることが原因であると考えられる。なお,他にも同様の例があるが,これ以降は指摘しない。)。
カ 平成17年8月分
 原告は,平成17年8月6日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月2日には原告は3時間30分しか就労しておらず(午前9時から休憩開始時刻の午後0時30分まで)、同月1日から6日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月6日の就労は,4時間30分の限度では時間外労働(残業)とならない。 
キ 平成17年9月分
(ア)原告は,平成17年8月20日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月16日には原告は1時間23分しか就労しておらず,同月15日から21日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月20日の就労は,6時間37分の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同月21日の休日労働時間を28分と主張する。
 しかし,タイムカードの打刻は午後1時26分と午後2時54分であり,就業規則上,休憩時間が終了する午後1時30分から午後2時54分までの1時間24分を休日労働時間とするのが相当である。
(ウ)原告は,同年9月3日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月1日には原告は就労しておらず,同年8月29日から9月4日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月3日の就労を平日の時間外労働(残業)とすることはできない。
ク 平成17年10月分
(ア)原告は,平成17年9月24日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月23日には原告は就労しておらず,同月19日から25日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月24日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同年10月15日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月10日には原告は4時間14分しか就労しておらず,同日から16日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月15日の就労は,3時間46分の限度では時間外労働(残業)とならない。
ケ 平成17年11月分
 原告は,平成17年11月5日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月3日には原告は就労しておらず,同年10月31日から11月6日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月5日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
コ 平成17年12月分
(ア)原告は,平成17年11月19日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月16日には原告は就労しておらず,同月14日から20日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月19日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,同月26日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月23日には原告は就労しておらず,同月21日から27日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月26日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
サ 平成18年1月分
(ア)原告は,平成17年12月24日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月21日及び22日には原告は就労しておらず,同月19日から25日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月24日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
(イ)原告は,平成18年1月7日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月2日から4日まで原告は就労しておらず,同月2日から9日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月7日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
シ 平成18年3月分
 原告は,平成18年2月18日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同月16日には原告は就労しておらず,同月13日から19日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月18日の就労は,8時間の限度では時間外労働(残業)とならない。
ス 平成18年4月分
 原告は,平成18年4月1日の就労をすべて平日の時間外労働(残業)として計上する。
 しかし,同年3月30日には原告は6時間44分しか就労しておらず,同月27日から同年4月2日までの期間について,1日に8時間,1週間に40時間の範囲では,時間外労働(残業)とはならない。
 したがって,同月1日の就労は,1時間16分の限度では時間外労働(残業)とならない。
セ 平成18年5月分
 原告は,平成18年4月30日の就労を休日の労働として計上する。
 しかし,前記認定判示のとおり,被告の就業規則13条には休日の振替に関する規定があり,別表1によると,同日から1週間以内の同月29日には原告は就労していないから,同月30日の就労は平日の労働として計上されるべきである。
ソ 平成18年6月分
 原告は,平成18年5月28日の就労を休日の労働として計上する。
 しかし,前記認定判示のとおり,被告の就業規則13条には休日の振替に関する規定があり,別表1によると,同日から1週間以内の同月27日には原告は就労していないから,同月29日の就労は平日の労働として計上されるべきである。

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