2010年11月15日月曜日

交通事故関連の裁判例

東西に通じる、歩車道の区別のある片側一車線の道路(以下「東西道路」という。)と、南北に通じる一車線の道路(以下「南北道路」という。)とが交差する、信号機により交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)において、東西道路の東行き車線を走行していた被告乙山次郎(以下「被告次郎」という。)が所有し、被告乙山太郎(以下「被告太郎」という。)が運転する普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)と、南北道路を北から南に走行していた甲川花子(以下「甲川」という。)運転にかかる自転車(以下「甲川車」という。)とが、出会い頭に衝突し、甲川が傷害を負った(以下、この事故を「本件交通事故」という。)として、甲川の同居の親族(父)との間で、甲川を被保険者とする人身傷害補償特約付きの自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた原告が、甲川に対し、上記特約に基づいて人身傷害補償保険金(以下「本件保険金」という。)を支払ったことによって、商法六六二条に基づき、甲川が被告らに対して有する本件交通事故による損害賠償請求権を代位取得したとして、被告らに対し、その支払を求めるとともに、本件保険金の支払日の翌日である平成一九年八月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案の裁判例です。甲第一四号証、甲第一五号証、乙第九号証ないし一一号証及び大阪市教育委員会教職員給与担当課長の調査嘱託回答書(乙一三)によれば、甲川は、大阪市立山之内小学校に事務主事として勤務していたところ、本件交通事故当日から平成一八年九月末日までの間、公休をとり、同年一〇月二日から職場に復帰したこと、甲川は、同小学校の庶務部の福利係(要保護・準要保護に関する事務全般を担当する。)、経理部の公費係(このうち、学校維持運営費に関する事務を担当する。)及び学校徴収金係(このうち、収入に関する事務を担当する。)に所属してそれぞれの事務を担当しており、本件交通事故の前後で担当する事務に変更はないが、本件交通事故後は、同僚の職員等が甲川の職務を援助している状態であること、甲川の所得は、本件交通事故の前年である平成一七年は二八二万八二〇六円、平成一八年は二六六万〇一二五円であったが、本件交通事故前後を通じて、甲川が支給を受ける給与及び賞与の額について、特に変更があったわけではないこと、甲川は、本件交通事故前は健康状態も良く、早朝から定刻に出勤し、仕事をてきぱきとこなしていた状態であったところ、本件交通事故後に復職した後は、通勤時、自動車に対する恐怖心が拭えない、頭痛やふらつきがある、食欲がない、仕事に対する不安感が強いなどと訴えることが多く、平成一九年度は、症状も徐々に回復し、職務を遂行することができる状態になったものの、書類作成に追われるなどした場合には、時として、精神的に不安定な状態になることもあるという状態であったことがそれぞれ認められる。以上のような、本件交通事故後の甲川の勤務状況等と、前記諸事情に鑑みれば、甲川は、本件交通事故前後を通じて、その収入が大幅に減少したわけではないものの、これは、勤務先の同僚等による援助があったことに加え、甲川においても労働能力の低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしたことによるものであるとみるのが相当である上、甲川の脳機能低下による適応力の障害が、将来的にその昇進、昇給等に影響を与える蓋然性が高いということができるのであるから、これら諸事情を考慮すると、甲川は、症状固定時から就労可能な六七歳に至るまでの四四年間にわたって、その労働能力を三〇パーセント喪失したものとみるのが相当である。また、甲川が地方公務員であることや本件交通事故前の収入の額等に鑑みれば、甲川は、上記期間にわたって、平成一八年賃金センサス・産業計・企業規模計・女性労働者・学歴計の全年齢平均賃金である三四三万二五〇〇円の財産上の利益を挙げる蓋然性が高かったということができる。
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